パイロット訓練で学ぶ7つの基本マニューバー【動画あり】

07.06.2025 | ブログ

サムネイル:パイロット訓練:7つの基本マニューバー

日頃より【航空教室】にご参加いただいている皆様、いつもありがとうございます。

今回のブログでは、【航空教室】第1037回で取り上げた「飛行中の見え方:マニューバー」について、さらに深くご紹介いたします。

というのも、普段からスカクリを支えてくださっている完治さんが、今回、気合いのこもった動画を撮影・編集してくださいました!

しかも、操縦を担当しているのはなんと校長本人。

これはぜひ多くの方にご覧いただきたい内容です。

そこでこのブログでは、動画に登場する基本のマニューバー(操縦技術)を改めて整理し、学びにつながるポイントをお届けします。

パイロット訓練生の皆様はもちろん、空からの美しい景色も楽しめる映像となっておりますので、ぜひ映像とあわせてお楽しみください。

※記事と動画で紹介する情報は、あくまでも一例となりますのでご了承お願い致します。安全な飛行を目指して、他の教材等も参照することをお勧めします。

7つのマニューバー:良い例と悪い例

まず、「マニューバー(maneuver)」とは、意図的に行う飛行操作のことを指します。

1. ストレート&レベルフライト(Straight & Level Flight)

まずは、高度と姿勢を一定に保ちながら、まっすぐ安定して飛ぶ基本中の基本の飛行についてです。この飛行操作は、すべてのマニューバーの基礎になります。

【✅ 良い例】

  • 高度が安定し、水平線とダッシュボードが一直線になっている
  • 機体のピッチ(上下角)やバンク(傾き)が安定し、ヨー(左右のふらつき)が無い

【❌ 悪い例】

  • 少しずつ高度が上下してしまう
  • 機体が左右にふらついてしまう

【💡 ポイント】

    • 地平線を見るのがコツ!

地平線が機体の正面に対してまっすぐ水平になっているかを常にチェック。もし傾いていれば、機体もズレている。

    • 目印を決めよう!

前方に見える山や建物などを目標物として使い、そこに向かってまっすぐ仮想の線(進路)を引くイメージで飛ぶと安定する。

    • ダッシュボードと地平線の“間隔”を覚える!

機首の高さ(ピッチ)を視覚で覚えておくのが大事。たとえば「ダッシュボードと地平線の間が指3本分くらい(目線の高さによる)」が水平飛行の目安。もし、ダッシュボードと地平線の間が指2本分なら上昇中、指4本分なら降下中といった感覚をつかもう。

    • VSI(昇降計)も確認!

針が0(ゼロ)を指しているかチェック。

ストレート&レベルフライト

2. ターン(Turn)通常旋回

次に、機体の向きを変える操作についてです。バンク(傾き)を使って、左右に旋回します。この操作は、小さな方向転換から進路変更まで、色々な場面で使われる動きです。

【✅ 良い例】

  • 一定のバンク角(15°〜30°)で滑らかな旋回
  • 高度・スピードが保たれている

【❌ 悪い例】

  • バンクが急すぎる/浅すぎる
  • 高度が上昇/降下してしまう
  • スピードが速く/遅くなってしまう

【💡 ポイント】

    • 地平線の傾きでターンを感じ取ろう!

ターン中は「地平線が斜めになっている=バンクしている」証拠。エンジンカウルと地平線の角度のズレを目で見て、今どれくらいバンクしているかを覚えよう。

    • 20度以上のバンクでは高度が下がりやすい!

軽くピッチアップ(機首を上げる)して高度をキープしよう。

    • ピッチを上げるとスピードが落ちるので、パワーを足す!

スロットルを少し足してエアスピードを維持。動画内では2300RPMの出力で90ノットを維持。

    • 最後にトリムで微調整!

操縦が落ち着いたらトリム(Trim)を使って手の負担を減らし、楽に飛ぼう。

3. スティープターン(Steep Turn)急旋回

続いて、45°のバンクで小さな円を描く旋回についてです。高度・姿勢・スピードをすべて保ちながら行う、操縦スキルの見せどころです。

【✅ 良い例】

  • 45°のバンクで綺麗な円を描いている
  • 高度とスピードが安定して維持されている

【❌ 悪い例】

  • 高度が下がったり、スピードが落ちたりして不安定

【💡 ポイント】

    • Gがかかる中でも冷静にコントロール!

スティープターンでは、1.4G程度の加重が体にも機体にもかかる。操縦桿が重く感じるが、焦らずにピッチとバンクを一定に保つのがコツ。

    • バンクと一緒にピッチアップをしよう!

バンクが深くなるほど、高度が落ちやすくなる。旋回に入る際、20°バンクを超えると同時に少しピッチアップすることで高度を維持しやすくなる。

    • パワーを足してスピード維持!

急旋回中は高度維持のための機首上げが大きいので、スピードが落ちやすい。スロットルを追加してパワーをキープしよう。

    • ロールアウト(旋回終了)も丁寧に!

目標方位の約20°手前からバンクを戻し始め、ロールアウト後はピッチとパワーを元の状態にリセット。ここで気を抜くとその後に機体が上下しやすいので注意。

    • 目線は外へ!

視線をコックピットに固定せず、地平線を見ながら旋回の状態を確認。バランスよく回れているかを目視でチェック。

4. クライム(Climb)上昇

次に、機体の高度を上げる操作についてです。適切なピッチ(機首の角度)とエンジンパワーで、まっすぐ安定して上昇することが求められます。
動画内ではおよそ 2200フィート → 3000フィート へ上昇します。

【✅ 良い例】

  • 適切なピッチで滑らかに上昇
  • パワーをしっかり追加(例:2200RPM → フルパワー)
  • 上昇中は右ラダーを軽く踏んで、機体を風に正対させるように維持

【❌ 悪い例】

  • ピッチが高すぎて、エアスピードがどんどん低下
  • 機体がまっすぐ飛べず、左右にずれていく(ラダー不足・地平線の確認不足)

【💡 ポイント】

    • 目標物を決めて、真っ直ぐ上昇しよう!

前方に見える地形や地平線などを進行方向のガイドにして、横ズレしないようにするのがコツ。

    • 地平線の位置は“エンジンカウルの上”くらいが目安!

上昇中は、地平線が普段より下に見える状態になる。この感覚をつかむと、自分のピッチが適正かどうかが視覚でわかるようになる。

    • ラダーを忘れずに!

パワーを上げるとプロペラの影響で機体が左に流れやすくなる。右ラダーを軽く踏むことで、機体の鼻先(ノーズ)を正面に維持できる。

    • レベルオフの流れもスムーズに!

目標高度(例:3000フィート)に近づいたら、少しずつピッチを下げて機首を水平に戻す → そのあとパワーを2200RPMに戻す。これが「レベルオフ」の基本動作。

5. ディセント(Descent)降下

続いて、機体の高度を下げていく操作についてです。着陸に向けた準備や巡航高度の変更時に頻繁に使われます。
降下中もスピード・姿勢・方向のコントロールを保つことがとても重要。
動画では約3600フィート → 3000フィートへスムーズに降下。

【✅ 良い例】

  • コントロールされた、滑らかな降下
  • エアスピードとバンク角(姿勢)が安定している

【❌ 悪い例】

  • 降下率が急すぎて、機体が不安定に
  • エアスピードが速すぎる/遅すぎる(エンジンパワーやピッチの調整不足)

【💡 ポイント】

    • 機首を下げ所定の地平線の位置に合わせて安定して降下!

ストレート&レベルで覚えた「ダッシュボードと地平線の間」が指3本分だったとしたら、降下中はその間隔が約6本分に。これをスカイクリエーションでは「ダブルピッチ」と呼んでいます。

    • 外の景色同様、計器の効果的なチェック!

「外を7割、計器を3割」など、機械的なスキャニングが有効。

    • 同じ速度を保つのも良い練習!

降下中に速度を一定にするために、スロットルの調整がキーポイント。

    6. スローフライト(Slow Flight)

    次に、失速に近いほどの低速域(例:45ノット)で飛ぶ訓練についてです。
    失速近くの不安定な状況で、エルロンの効きも悪くなり、ラダーを使った微調整が重要になります。

    【✅ 良い例】

    • 機首が揺れず、ラダーでしっかり方向を保っている
    • エルロン操作は必要最小限にとどめている

    【❌ 悪い例】

    • 機首が左右にフラつく(ラダー不足 or エルロン操作のしすぎ)
    • スロットルの調整ができず、スピードを保てない

    【💡 ポイント】

      • ホワイトアークに入れていく感覚を覚えよう!

    エアスピードインジケーターの白い弧(White Arc)は、フラップ操作ができる範囲。
    フラップを使うと、揚力の増加による高度維持が難しくなるので、要注意。

      • 高迎角(ピッチアップ)とパワーでバランスをとる!

    スピードが落ちると揚力も落ちる。だから、機首を上げつつ、スロットルで推力を保つのがカギ。
    姿勢が安定したら、トリムで保持して楽に飛ぼう。

    7. パワーオンストール(Power-On Stall)

    最後に、離陸上昇中などに機首を上げすぎて、揚力が急激に失われる「パワーオンストール」です。「失速(ストール)」を意図的に発生させ、安全に回復するための訓練に。失速状態の感覚を知り、正しい対処方法を身につけることが目的です。

    【✅ 良い例】

    • 徐々に機首を上げて失速を誘発
    • 失速直後すぐに適切な回復操作を開始
    • 方向(ヨー)や高度の回復もスムーズで安定している

    【❌ 悪い例】

    • 急に機首を上げすぎて失速が唐突に起こる
    • 回復操作が遅れて、高度を大きく失う
    • 失速中に機体の方向が乱れ、制御が難しくなる

    【💡 ポイント】

      • 失速を感じたらすぐに回復操作!

    ピッチを下げて失速から抜け出すのが最優先。遅れると高度が大きく失われます。

      • 失速時は方向を安定させるためにラダーをしっかり踏もう!

    失速時のロール(回転)はエルロン修正が出来ないので、ラダーで対応。エルロンを使うとスピンを誘発するので要注意。

      • パワーはそのままキープしつつ、徐々に回復させるイメージで!

    急激にパワーを下げたり戻したりせず、安定した操作で機体を戻しましょう。

    おまけ!動画内で使用された航空用語集!

    ぜひ、動画を見ながら勉強する際に、お役立てください!

    • Horizon:地平線
    • VSI(Vertical Speed Indicator):昇降計・飛行機が1分間に何フィート上昇 or 降下しているかを示す計器
    • Airspeed Indicator:対気速度計・機体が空気に対してどれくらいの速さで飛んでいるか(ノット単位)を示す計器
    • Bank Angle:飛行機が左右にどれだけ傾いているかの角度
    • Attitude Indicator:姿勢指示器/ 飛行機の姿勢(機首がどれだけ上向き・下向き、左右に傾いているか)を示す計器
    • Vy Pitch:単位時間あたりに、最も高く上昇できる速度で上昇するために必要な、機首の上げ角
    • Vy Speed:最も早く高度を稼げる速度
    • Stall Warning Horn:飛行機が失速(ストール)しそうなときに鳴る警報音

    今回動画撮影にご協力いただいたのは完治さん。ニューヨークでカメラマンとして活動されています。


    2025年9月27日(土) 訓練説明会 with LUXURY FLIGHT

    エアラインパイロットを目指す方を対象とした説明会を9月27日(土)に開催を予定しております。
    場所は、羽田空港@Terminal1 5FのLUXURY FLIGHT羽田本店です。
    詳しい開催概要につきましては、追ってご案内させていただきます。
    また、ご参加の皆さまには国土交通省航空局で認定された訓練機シミュレーターを使用して模擬フライトも行っていただけます。
    エアラインパイロットになるにはどんな軌跡を辿るのか、より強くイメージしていただける機会となるかと思いますので是非ともお申し込みください。
    ※参加費用:15,000円、募集人数6名

    ご参加にはお申し込みが必要となります。以下のフォームよりお申し込みください。

    ▶︎ お申し込みはこちら

    関連記事